将来は天然物がなくなってしまう?相模湾、 東京湾の問題
相模湾の水産資源が黄色信号だと聞きました。どのような事ですか?
今まで人が獲り続けて海産物が絶滅した例は、世界的にみてごくわずかな例しかありません。陸の動物では、日本だけでもオオカミやカワウソなど絶滅した例は数多くありますね。陸に比べて海は非常に豊かで生産力が大きく、生物が増えるポテンシャルが高く回復力もあった。そんな海に人類はいろいろなプレッシャーを与え、汚してしまった。現在「相模湾」で獲れるアワビは約9割が放流したものです。この数字は、自然界で天然のアワビはほとんど再生産していない事を示しています。
またマダイも、年によっては約半分が放流したもので占められています。もし放流を止めてしまうと、放流分が確実に減る事になります。人間の手助けを停止した場合、どうなってしまうのか本当に大変な事だと思います。
なぜそのような事になったのでしょう?
アワビの場合、減少してしまった原因はよく判っていないのですが、藻場や磯場の環境が悪くなったり無くなったからだと言われています。アワビの稚貝やマダイの稚魚たちが安心して育つ「ゆりかご」が無くなってしまった。そしてやはり水質汚染ですね。これもハッキリした事は言えませんが、人間は有害な化学物質を意図的ではないにせよ出してしまっています。アワビに当てはまるか分かりませんが、環境ホルモンが原因で生殖能力が無くなってしまった巻貝の例があります。アワビも化学物質の影響を受けているかもしれません。いずれにしても、人間の活動が影響しているのは間違いありません。
また現在、相模湾では「磯焼け」が深刻な問題となっています。磯焼けとは海藻の群落が大規模になくなった状態が何年も続く事です。磯焼けは、黒潮の接近や水温の上昇によって数十年に1回くらい起きます。そういった偶発的な自然の攪乱は、起きても数年で元どおりになります。ところが近年の磯焼けは放っておいても元にもどらない。その要因は環境の大規模な変化、温暖化傾向にあると思います。地球規模となると人知が及びませんが、小規模な磯焼けの場合は人間の影響が大きく、例えば生活排水や土木工事の濁水によって藻場がダメージを受けてしまうことがあります。
相模湾もそうですが、東京湾も大変な危機にあります。例えば海底にすむカレイやシャコなどは壊滅状態です。漁業による乱獲の影響も考えられたので、シャコの場合何年も禁漁をしました。3年では効果が出なかったので、結局5年、6年と続けましたがシャコは戻っていません。このことから原因は乱獲ではなかったのです。そこで疑われている要因の一つが「貧酸素水塊」です。これが東京湾の海底に広がり、海底に生息する魚介類を蝕んでいると言われています。このように人間の五感では感じ得ない変化が海の中で起きているのが、ここ最近の状況です。https://ja.wikipedia.org/wiki/貧酸素水塊
予算がカットになり事業がストップすると?
予算カットはとても深刻で、現在の栽培漁業は国からの援助は受けていません。
また県の予算も厳しいので受益者負担をお願いしています。これは放流した魚で利益を得る方々から資金をいただくと言うことです。つまり漁業者はもちろん、釣り人や釣り船の関係者にも負担をお願いしているのですが、強制力がないので皆様の善意におすがりしている状態です。
密漁があると大変ですね
漁師さんが身銭を切って放流を支えてくれている訳ですから、そのような事が続くと漁師さんも疲弊して漁業も衰退し、ひいては栽培漁業もストップしてしまいかねません。そうなるとアワビやタイの水揚げはなくなってしまうかもしれません。