GOMI拾い侍を始めたきっかけは?
GOMI拾い侍は2008年「一世一代時代組」の代表である後藤一機が北海道で立ち上げました。メンバーは元々、役者を養成する専門学校の学生で、その学校の講師をしていたのが後藤一機です。
役者の卵である僕たちに対して「役者とは何か」を本気で指導してくれる姿に感銘を受けて、人生を掛けてこの人についていこうと思っている時に、「一世一代時代組」の東京支部を作ると聞いて、メンバーに加わりました。
代表の後藤は、元々原宿ホコ天でストリートパフォーマンスをしていましたが、90年代半ばにホコ天が中止になりました。理由は、歩行者天国が解除される時間ぎりぎりまで踊り続けた若者やそれを見に来る観覧者が出す『ゴミ問題』です。
若者が創った文化を若者が壊すということに、とても悔しい想いが心に残っている時、仕事で訪れた北海道。何気なく吹雪の中に目を向けると、お婆ちゃんが火ばさみを使ってゴミを拾う姿。これをパフォーマンスとして表現することで、ゴミ問題に関心が集まるのでは?と考え、立ち上げたのが「一世一代時代組」です。
渋谷はいつからですか?
「一世一代時代組」の東京支部は2016年1月1日から始めました。渋谷は若者のトレンドがあり、情報を発信するには丁度よい街なんです。
最初のパフォーマンスの時は、「何々?何が始まるんだ??」という空気になり、いざゴミを拾うと、「ゴミ拾うんかーーーい!!!(笑)」と笑いに包まれました。
どのような取り組みですか?
毎週日曜日に着流しと中折れ帽の姿で、渋谷の中心街でGOMIを拾いながらパフォーマンスを行っています。通称「GOMI 拾い侍」。「塵芥の陣(ちりあくたのじん)」と題して、渋谷の街を練り歩き、落ちているGOMIを発見すると、「何奴っ!」GOMIを拾うと、「モラルの無い心を成敗!!!」と言います。
この言葉の真意は、『道に落ちているGOMIに罪はなく、そのGOMIを捨てた者のモラルの無い心を成敗する』という意味です。罪を憎んで人を憎まず。の信念で、単なるボランティア活動ではなく、役者(表現者)として、世の中に、メッセージを発信する啓発活動として実施しています。
人を感動させて、心を踊らせ、人を変える。まさに役者(表現者)冥利に尽きる活動です。
現在活動中のメンバーを教えてください。
代表の後藤一機(ごとういっき)を除くと、松本悠資(まつもとゆうすけ)、落合志信(おちあいしのぶ)、天下泰平(あまもとたいへい)、神城利久(かみしろりく)、鏑木美洋(かぶらぎみひろ)の計5名が中心となって活動しています。ただ、役者の仕事がある時などは人数が増減します。
僕らと一緒にGOMI拾いしたいと言う一般の方も募集しています!侍の衣装お貸ししますよ!
また、「喝!回収隊」というチームと一緒に活動しています。「喝!回収隊」とは、ちんどん屋のような姿で侍の後を歩いて、『捨てる場所がなくて困っている人達、ゴミがあれば貰います!』『ポイ捨てに喝!』とアピールして、事前にポイ捨てを防いでいます。
とても評判がよく、1回に30ℓのゴミ袋が4袋くらい集まる事もあります。渋谷にはゴミ箱がないので、皆さんも困るでしょうから。
実は、彼らは通信制の鹿島学園高校の学生達なんです。秋葉原キャンパスにある演劇などを教える「カシマアクターズ」で後藤さんから殺陣指導を受けている生徒達で、僕らのGOMI拾い侍のパフォーマンスを見て、「自分たちも一緒に何かしたい!」と言うことだったので、GOMI貰い活動をする「喝!回収隊」を組織しました。
海外のメディアにもずいぶんと取り上げられていますね。
世界三大通信社の1つ、フランスのAFP通信にパフォーマンス動画が紹介され、さらに、アメリカ合衆国政府が運営する国営放送"Voice of America"にも紹介されました。"Voice of America"で紹介された動画は、最近調べたのですが、Facebookで1.5万「いいね」がついていて、2.8万シェアされています。また、動画再生回数が231万回を記録し、1150のコメントが寄せられています。
私の個人的な事をお話しますと、カナダに住んでいる小学生時代の同級生だった女の子からFacebookを通じてメッセージがあり「これは松本君だよね、カナダで有名人だよ」と連絡をくれて、そこで初めて海外でも発信されている事を知り、驚きました。
我々が注目され始めたのは、誰かがツイッターで「ゴミを拾っている侍がいた」と発信してくれた事が発端です。だから、我々が知らないところでドンドン情報が広がっているのを実感していますし、SNSの力ってすごいなと思っています。
渋谷の繁華街でゴミ拾いをしていると、苦労などありますか?
パフォーマンスを見たいがためなのか、目の前でワザとポイ捨てをする方がいます。「もう一回やって」みたいな感じで。でもその場合は「一緒にゴミを成敗しましょう」と声をかけると、たいていの方は一緒に楽しんで拾ってくれます。
新聞やテレビ、SNSなどでの露出頻度が増えたこともあり、パフォーマンス中に「あっ、GOMI拾い侍だ」と声をかけてくれる方が多くなってきました。嬉しいです。
昨年11月に渋谷の喫煙所が撤去されました。
夜は本当にひどいですね。ここは渋谷なので、特に金曜・土曜日は酷い事になっています。現状を言葉で表現すると「タバコで路上が埋もれている」という感じで、まさにタバコの海のような状態です。
その惨状を伝えるために動画を制作しています。「ポイ捨ては駄目」というメッセージを込めて。その撮影も夜でしたが、やはりものすごい量のタバコが落ちていました。その動画はホームページでもご覧いただけます。
活動はいつですか?
毎週日曜日の渋谷です。場所はセンター街、公園通り、渋谷公会堂、渋谷スクランブル交差点周辺。時間は14時から16時くらいまで、夏は陽が高いので15時から17時くらいまで活動しています。回収するゴミは多い時で45ℓの袋5個くらいでしょうか。年間で言うと、今まで250袋を拾い集めました。
その他、見どころと言っちゃなんですが、センター街のABC-MART、マクドナルドなどが角にある交差点で、「何奴っ!?」から始まる普通のパフォーマンス以外の「スペシャルバージョンのGOMI拾いパフォーマンス」を行っています。
センター街のこの場所で、毎回一回しか披露しない特別なパフォーマンスです。パフォーマンス内容は毎回違います。ストリートパフォーマンスに近い形で実施していますので、これだけでも是非見に来て頂きたいです!
渋谷はどのようなゴミが多いですか?
一番多いのはタバコですね。それから缶、瓶、折れた傘とか。通常は火ばさみで「何奴」と気合いを入れてゴミを拾っています。しかしハロウィン翌日の朝は、あまりに多量のゴミが散乱していて火ばさみでは取りきれなかったので、帚とちりとりで新たなパフォーマンスを作ってみました。
今後はコンセントのいらない掃除機で、ウィーンと掃除してしまってもよいのかなと思っています。将来は火ばさみの隊、帚の隊、掃除機の隊などで、合戦のようなパフォーマンスができればいいなと思っています。
拾ったゴミの処理は?
分別して宮下公園の管理事務所に引き取ってもらっています。渋谷区のゴミを回収される方々は、全てここでお世話になっています。
将来の夢は?
我々は役者なので、俳優という面でもTV、映画、メディア等で我々を知って頂く事。そしてその方々に、地球環境についての意識をより深めて頂き、地球の皆様でより良い地球を創造し、世界を平和にする事です。
今は東京と北海道にしか支部がないのですが、AKB48のように、将来的には全国や海外に支部を作りたいと思っています。世界中でポイ捨てをなくすという目標がありますから。