誰もが汚染者であり誰も汚染を受ける側となる国境がない問題
先生のお話だと日本の近海に多くのプラスチックが漂っていると聞きました。
この10年くらい大規模な研究用の航海も世界中で行われるようになり、どこにどれくらいプラスチックがたまっているのか調査されています。その結果、世界中の海で27万トンのプラスチックが浮いているとの結果が出ています。数にして5兆個でしょうか。日本の海は多くのプラスチックが漂っています。プラスチックの分布密度が高い場所は 地中海、黒海,ユーラシア大陸の南岸、インドから東南アジアから日本に至る海域など人口も密集地の近くになります。人工も多いですしプラスチックも多く使う、ゴミの管理もしっかりしていない。マイクロプラスチックの水中濃度が非常に高いのです。
日本人は環境意識が高いと思っていました。なぜ日本近海で高いのでしょうか?
東南アジアに比べたらポイ捨てなど少なくて街は綺麗ですが、それでも道にはプラスチックやペットボトルが落ちています。例えば荒川でボランティア団体が河口清掃するその場所で年間数万本のペットボトルを回収したと聞きます。日本ではゴミの管理がしっかりして、リサイクル率が高いのですが、海に出ていくものもたくさんありますね。リサイクル率が高くても、プラスチックの使用量が多ければ、リサイクルされずに海に出てしまうプラスチックの量も増えてしまいます。
また日本は黒潮の下流に位置しているので東南アジアや中国の南部から出たプラスチックが日本周辺に流れてくると考えられます。ただしマイクロプラスチックになった細かなプラ片からは東南アジアや中国から流れてきているという証拠はありません。あくまで推定です。これから中国や東南アジアの方々と調査していくことによってわかってくることもあります。日本のゴミもハワイやカナダに流れ着いたりしているので、ゴミを排出している国を責めるのではなく、世界みんなで考えていきましょうという事です。日本周辺の海域は世界の平均的値に比べると約30倍、密度が高いと環境省では報告しています。
海鳥や魚が体内に取り込んでしまった場合はどうなりますか?
エサと間違えて摂取してしまうと有害物質が生物の体の方に蓄積されてしまうことが懸念されます。しかし誤解のないように説明します。確かに魚の体内にプラスチックはたまっています。東京湾のカタクチイワシを調べた結果64尾中49尾から小さなプラスチックが出てきました。しかしプラスチックを含んだ魚を食べても、プラスチックは排泄されてしまいます。どこか人間の体内のどこかにプラスチックが溜まるということはないのです。
しかし一方で化学物質が含まれているので、消化液に溶け出して、一部が体に吸収されると考えられています。人間では確かめていないのですが海鳥では確認しています。有害な化学物質が溶け出して生物の体に蓄積してしまうとわかってきています。鳥で起こることは人間でも起こる可能性があります。しかし有害物質はプラスチックからだけではなく、食品などからも人間の体内に摂りこまれます。
現状で言えばプラスチックから入ってくる汚染物質の量は他の食品からのルートに比べより低いレベルになっていると考えられています。すなわち有害化学物質のことを考えても今のところ問題ありません。しかしこれから何も手を打たないと海に漂うプラスチックの量は増え、もしかしたらプラスチックから取り込まれる有害物質の方が増えてしまう事が世界的で懸念されています。世界中で海に漂っているプラスチックはこれから20年で10倍になってしまうと言われています。ダボス会議では今世紀の後半には海中の魚の量よりもプラスチック片の方が多く浮くと言う警告が出ています。プラスチックは海の中で自然に分解するものではないで出せば出すだけ、どんどん溜まってしまうということです。