妹尾さんは何をされていますか?
災害支援などのヤフーの社会貢献活動の責任者をしています。また、ヤフーではYahoo!ネット募金、Yahoo!ボランティア、人や環境にやさしい「エシカル」な商品を扱うエールマーケット、Yahoo!きっず、Yahoo!公金支払いなどがそれにあたりますが、それらの責任者をしています。
新メディアGyoppy! との関わりは?
ヤフーのミッションは「課題解決エンジン」として、情報技術で人々や社会の課題を解決することです。そしてヤフーが課題解決エンジンとして実現したい世界を表すビジョンが、「UPDATE JAPAN」です。また、CSRでも「情報技術社会の発展」「災害・社会課題への支援」「ダイバーシティの推進」「持続可能な社会への挑戦」と4つのUPDATE、領域に注力をして社会課題の解決に取り組んでいます。Gyoppy! もその活動の一部で、私はその推進役と責任者をしています。
Gyoppy! はなぜ始まったのでしょうか?
まず、Gyoppy! は「魚」と「Happy」を掛け合わせた造語です。ギョッピーと親しみを持って呼んでいただければと思います。インターネット企業のヤフーが「漁業、水産関係の分野の新メディア創設」と聞くと、唐突に思われる方も大勢いらっしゃるかもしれません。
しかしこの試みは、4つのUPDATEの一つ「災害・社会課題への支援」の活動からスタートしたものなのです。
2011年の東日本大震災後、ヤフーの社員の有志は被災地に向かいました。インターネット企業として情報技術を「活かせる」かどうかもわからないまま、現地に向かった社員が多かったと思います。支援活動を続けながら、ヤフーは翌年2012年から宮城県石巻市で「石巻復興ベース」という拠点を作りました。そして、そこを拠点に自転車イベント「ツール・ド・東北」などの復興支援の企画を立ち上げていきます。
また、自らも被災しながら復興のために奮闘している、若い漁師達との新しいチャレンジとして「一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン」の設立を支援しました。現在もヤフーの社員が事務局メンバーという形で関わっています。
彼らは、今までの3K「きつい」「きたない」「きけん」と言われてきた漁業・水産業を、新3K「かっこいい」「かせげる」「かくしんてき」という新たなイメージをもつ産業に変えていきたいという思いで活動をしています。地元の熱意ある漁師や水産業関係者と東京のインターネット企業が、違う目線、角度から水産業、漁業を支援していくことに挑戦しています。
東日本大震災がきっかけだったんですね
ヤフーとしては、復興支援、地方創生の活動の一環として支援をしていたわけですが、実際に漁師、水産業の方々と直接接点を持つようになって知ったこともたくさんありました。
海に囲まれ、海に生かされてきた私たち日本人は、海について本当は何を知っているのか?私たち都会のインターネット企業に何ができるか?自問してきました。
その結果として、世の中の現状を正しく伝えることで、世の中を少しずつ変えていくことが自分たちの使命ではないかと考え、10月3日にスタートさせていただいたのが「Gyoppy!」になります。
具体的には何を?
Gyoppy! は水産業、漁業の情報や話題をお伝えするだけなく、寄付やイベント参加など、「海の課題解決につながる読者の行動を促す」ことのできるサイトです。
例えば、ヤフーにはYahoo!基金というヤフーが立ち上げた任意団体があります。この団体は、Yahoo!ネット募金というヤフーのサービスを通じて、最近では平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震の緊急支援で、計100万人以上の方に寄付をしていただきました。ヤフーのお客様の中に、被災地を応援しようとアクションをしてくださった方が大勢いたわけです。記事を読んでアクションを起こすことは、当事者性が圧倒的に増すと思っています。
以前ゴミ拾い団体の方から「1度でもゴミ拾いに参加した方は少なくとも2度とポイ捨てをしなくなる」というお話を聞きました。ゴミ拾いに1回参加することで自省の効果が残るというお話を聞いて、「当事者になる」ことが大切で、世の中を変える第一歩だと感じました。Gyoppy! ではアクションに繫がるお願いや仕掛けを用意させていただいています。
良い試みですね。Gyoppy!を広めるにはどうしたら良いですか?
海の環境問題だけに取り組んでいる企業は、ヤフーを含め多くはありません。今は企業、NPO団体、専門家の方など、どなたとでも連携をして記事を増やし、ユーザーの皆さまに積極的にシェアをしていただけるように仕掛けることで、活動を大きくしていきたいと思っています。
課題は何でしょうか?
SNSやターゲティング時代の特徴なのですが、知っている方や関心のある方にはすぐに伝わるのですが、関心のない方には伝わりづらい。つまり内輪ネタといいますか「これ大事だよね!」と声をあげ、「100いいね」が付いて良かったと安心していると、実は105人しか、関心を持っていなかったということも(笑)
やはり、できるだけ多くの方に情報に触れていただいたうえで「100いいね」を200にも1000にもしていくのが健全だと思います。なので、まずはヤフーのサービス面の一部を使って、今はまだ関心の低いユーザーの方にも情報が届くようにしていきたいです。
また、例えば、初めて野球をやる方に「真剣にやれよ!!」と言っても真剣になってはくれないですよね。まずは野球の楽しさから伝える、ということを大切にすると思います。
Gyoppy! でも「海の美しさ」や「漁業の素晴らしさ」など、視覚的だったり、楽しい話題だったりも入れていかなければ、広がりはないと思っています。Gyoppy! は株式会社Huuuu(フー)さまにコンテンツ制作で連携をしていますが、そうした狙いがあってのものです。
ヤフーのサービスには毎日数千万人の方が訪れます。海の環境、水産業の問題に直接関心がない方も「おっ、なんだろう?」と思っていただけるよう、なるべく「一般の消費者の感覚に近い切り口で記事を提供する」ことを意識していきたいなと思っています。
記事作りに特徴はありますか?
Gyoppy! 編集部で取材執筆している記事と、パートナー様から提供される記事と二つに分かれています。パートナー様の記事はそれぞれの想いで取材されていると思うので、専門的で多様性がある記事が多い傾向にあります。ただ、当然正確性が求められるので、データに基づいた記事を掲載させていただくことになるかと考えています。
Gyoppy! 編集部サイドの記事はできるだけ読みやすく、一般の方にも受け入れやすいように、まずは海、漁業のことを知ってもらうことを第一に考えて作っています。
10月3日にリリースされて反応はいかがですか?
ヤフーのアクションに、色々な企業、関係者の方から「協力したい」「連携をしたい」と連絡をいただいています。今のGyoppy! の状態が十分だとはヤフー自身も思っていません。気を引き締めて活動していきたいと思っています。
近年、海水浴客の海離れが進んでいます。Gyoppy! で解決できますか?
昨今、海水浴離れが叫ばれていることは承知しています。やはり海に接していないと、海の問題そのものに実感が持てません。人々と海(自然)が関係を持ち続けることはすごく大切だと思います。タイミングが合えばGyoppy! でもこれから伝えていきたいです。
ヤフーのトップページから閲覧できますか?
パソコンであればYahoo! JAPANの左下部分から入ることができます。また、スマートフォンアプリの場合は随時、Yahoo! JAPANの「あなたのおすすめ」のタイムライン上に記事がアップされていく予定です。ぜひご覧ください。
Gyoppy! の今後の展開に期待が持てますね
そのように願っています。今は記事だけですが、今後は魚離れを意識した「魚の簡単レシピ」をご紹介するページもできるかもしれません。今は3団体に記事のご提供をお願いしていますが、今後パートナー、企業、NPO、専門家の皆さんと一緒に読みやすいコンテンツを増やす予定です。また、イベントも簡易なものから楽しく参加できるものまで、Gyoppy!を通じ、ハッピーに繋がる取り組みを増やしていきたいです。
Gyoppy! のようなサイトはありそうで、なかったですね?
そうですね。もし似たようなサイトがあったとしても運営はご苦労をされていると思います。これが社会課題の難しいところなのです。特に海の課題でいえば、魚の漁獲高激減のニュースがあったとしても「スーパーに行けば買える」という日々の生活・現実の前に、一般の方と専門家・プロの方との間には心情的にだいぶ解離があると思います。
だからヤフーも、もちろん警鐘は鳴らしていきますが、一般の方にはなかなか鐘の音は届きづらいという前提で、Gyoppy!の記事を通じて前向きなアクションを作っていきたいと思っています。