今、あなたの力が必要な理由

vol.51

ミスキャンパスと世の中を変えませんか!~社会課題解決を担う女子大生チームの挑戦~

中山柚希

中山柚希さん- Yuzuki Nakayama -

凸版印刷株式会社 キャンパスラボ 代表/プロデューサー

ミス青山コンテストに出場後、ミスキャンパスのプロジェクトチームを立ち上げ、ターゲット視点とインフルエンサー視点を活用し、様々な企業の商品開発やプロモーション企画立案を行う。大学卒業後は凸版印刷株式会社に入社し、新規ビジネスとして社会課題に取り組むミスキャンパスのプロジェクトチーム「キャンパスラボ」を事業化。企業や自治体と共創し、地域活性やヘルスケア、女子大生のキャリアデザインなど、若者や女性が向き合うべき課題にプロデューサーとして取り組んでいる。

キャンパスラボHP:https://www.campuslab.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/yuzuki.nakayama/
Twitter:https://twitter.com/yuzuki_miss1

中山さんは何をされていますか?

私は凸版印刷株式会社が運営する「キャンパスラボ」という各大学の「ミスキャンパス」が集まり、社会課題の解決に取り組むプロジェクトチームをプロデュースしています。

経緯を教えてください

大学時代にミスコンテストに出場し、たまたま同年代のミスキャンと一緒に企業とタイアップし若者向けの商品開発をする機会がありました。その時に、若い女性の視点を活かしたマーケティング活動にやりがいや可能性を感じたんです。卒業後は凸版印刷に入社し、会社の事業としてキャンパスラボを事業化し、プロデュースしています。

どのような取り組みをしていますか?

キャンパスラボは、ミスキャンが社会課題に取り組み、企業や自治体と共創し課題を解決するプロジェクトチームです。10代、20代の若年層に対するマーケティングから商品開発、プロモーションまで一貫して考え、実践しています。

単なるモデルではなく、若年層のリアルターゲットとしての視点と、インフルエンサーとしての視点を活かし、クライアントと生活者を結ぶオピニオンリーダーとして活動しています。

※インフルエンサー:世間に与える影響力が大きい人物。ミスキャンパスは大学のPRパーソンとして若い世代に向けて自ら情報を発信している。

面白い取り組みですね。

「ミスキャンパスが世の中を変える」というスローガンを掲げ、社会課題解決の活動に注力しています。

若者の視点で地域の魅力を発見・発信する「地域魅力創出ラボ」、健康リスクやメンタルケアなど、若者や女性が知るべき情報を伝え啓発する「セルフケアラボ」、学生のうちに社会と関わり、働き方ややりがい、人生設計について考える学外学習の機会をつくる「キャリアデザインラボ」を柱に、企業・自治体と一緒に様々なプロジェクトに取り組んできました。

どのようなミスキャンパスが活動しているのでしょうか?

全国のミスキャンパスが各地域の活性化に取り組んでいます。

東北出身のミスキャンが集まって東北へのI /Uターン促進の移住体験企画を考案したり、神奈川に住む・通うミスキャンが神奈川県民の健康増進の啓発に取り組んだり、静岡出身のミスキャンがお茶を淹れる文化を若い世代に広める活動をするなど、自分たちの出身地域をもっと元気にするために活動しています。

今までの活動は?

日本財団さんと「海と日本プロジェクトinかながわ」の一環として、海を守り、きれいな海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げるメッセンジャーとして活動し、神奈川の海の魅力を若い世代に発信したり、海洋問題に対する様々な取り組みを知ってもらい、参加してもらうための企画を実行しました。

他にはどのような活動をしていますか?

自治体さんとも多くの取り組みをさせていただいています。鹿児島県の観光活性化のために、首都圏の女性向けの観光ツアー開発を行ったり、文京区と一緒に文京区に住む・通う学生に街のボランティアへの参加を呼びかけ、学生に社会体験の機会を提供しました。

他にも、スポーツ庁の健康増進の一環として、神奈川県の女性に運動習慣をつけることを啓発するために、神奈川県と一緒に「#Fit3033プロジェクト」を行い、WEB動画制作やヨガイベントの企画を行いました。今までの活動履歴がHPにあるので、是非ご覧ください。

キャンパスラボHP:https://www.campuslab.jp/

最近の若い人は社会課題に関心があるのでしょうか?

今の日本の若い世代は、小中学生の時に東日本大震災を経験しています。災害や年金問題など将来の不安感も高まる中で、今回発生した新型コロナウイルス。社会の動向がダイレクトに自分の生活に関わる事態に直面し、社会への関心が高まってきていると思います。若い人たちは「今ある暮らし」が当たり前ではないということに気付きはじめていると感じます。

最近、学生にSNSの使い方について尋ねてみると、Twitterで自治体の発する情報や政治家の意見をチェックするようになったという学生が多くなりました。新型コロナウイルスをきっかけに、社会の動向に興味を持ち始めたという学生の声もよく耳にします。

さらに、情報の受け手としてだけでなく、発信者として社会の出来事に対する自分の意見を発信する人も増えてくると思います。

これから若者の生活スタイルも変わって行きますか?

最近は、若い人たちの行動が「写真映え」から「ソーシャル映え」を求めるものに変化してきていると考えています。これまでは「おしゃれ」「可愛い」を重視している若い人が多く、常に新しい場所、新しいファッションで写真を撮り、自分のライフスタイルを見せて褒めてもらうこと求めていました。

しかし最近では「写真映え」はもちろん、社会に目を向けて行動することがカッコイイと考え、ソーシャルグッドな自分をおしゃれに発信する「ソーシャル映え」を気に掛ける若い人が増えています。

それにより、若い人たちが選ぶモノにも変化が現れると思っています。地球環境のことを考え、エコやオーガニックなど「サスティナブル(持続可能)」なモノ・コトを選ぶことがカッコイイという考え方が広がり、環境に配慮した商品へ手を伸ばすことが増えてくると思います。

オーガニックやサスティナブル商品は高額で学生さんには手がでないのでは?

「何に対してお金を払うか」という買い物の価値基準自体が変わっていくと思います。今までは、ファストファッションでシーズンごとに服を買い、流行りが終わったら捨てる。そしてまた新調するなど、「常に最新の流行り物を身につけている自分」に価値を感じ「安いモノを大量に買う」傾向がありました。

しかし今後は、ソーシャルグッドな行動がカッコイイという考えから「きちんと環境に配慮し、こだわりの素材で、良いものを長く愛用する自分」に価値を感じ、買い物の価値観も「少し値段が高くても、本当に良い商品を1点だけ選び抜いて買う」というように変わっていくと思います。

最近では、お母さんから服のお下がりをもらうことも増えていると聞きました。新品じゃなくても、ずっと大事にされてきた良い品物を引き継ぐことがおしゃれだと感じるようです。都心の商業施設でも中古品専門のブランドが人気を集めています。

「中古品」は憧れの気持ちを持って「ヴィンテージ」と呼ぶことが浸透し、「長く使うことがおしゃれ」というメッセージを発信するブランドが、若い人のココロを掴み始めています。社会的に見てカッコイイと思う気持ちが定着し、その理解が広まると、今後は加速度的に変化していくと思っています。

その風潮を若年層に伝えていくということですね

そうです。しかしキャンパスラボでは、「オーガニック商品は地球に優しいから買いなさい」というような一方的な啓発はしていません。

「こんなに可愛い商品がある!」「これを使っているとオシャレ!」「しかも品質がいいから長く使える!」といったように、あくまで生活者の視点で商品のメリットを伝えます。そして興味を持ってもらえたらはじめて「実はサスティナブルに深く繋がっている」と伝えています。

国連でSDGsが掲げられてから、企業・自治体なども単なる社会貢献活動(CSR)ではなく、本業のビジネスとしてSDGsに取り組み始めています。しかし、その活動を生活者にうまく伝えられていない団体が多いと考えています。

SDGsやエコに興味がない人にいきなり押し付けても、拒否反応が出て情報を見てもらえないことがあるため、受け手のライフスタイルや趣味趣向に寄り添い伝えることが大切です。それをサポートすることは、まさに若い人たちと同じ目線で生活しているキャンパスラボのメンバーたちの意見を活かせる仕事だと思っています。

SDGsに関するキャンパスラボの取り組みを教えてください

2020年4月には、改めて「SDGs」というキーワードを広く若い世代に伝えたい、企業や自治体のSDGs達成に向けた取り組みを若い世代に広めたいという想いから、『Cheer! SDGs 』というムーブメントを始動しました。若い人たちにサスティナブルなモノ・コトや、それに取り組むヒトを知ってもらい、共感してもらうために啓発活動に取り組んでいます。

また、サスティナブルをオシャレなライフスタイルとして取り入れてもらうために、自社メディア『オシャレに暮らそう Cheer!SDGs』を開始しました。
オシャレに暮らそう Cheer!SDGs HP:https://cheer-sdgs.jp

先日、『Cheer!SDGs』の取材としてメンバーと一緒に、オーガニックコットンで有名なプリスティンの渡辺会長にお話を聞いてきました。渡辺さんは自社製品を長く愛用されていると伺い、特にオーガニックコットンの下着はとても肌触りが良く、「安い品物」とは違うとおっしゃっていました。

実は、メンバーはオーガニックにはあまり関心がなく、購入したこともあまりなかったのですが、実際に商品を手に取ってみると本当に肌触りが心地よく、「こだわりを持って作られたものってこんなにもいいんだ!」と大きな気付きがあったようです。「良質な商品は少し高くても買う価値あり」という考え方が、将来の地球環境の保全につながることを若者に伝えていきたいです。

SDGsの啓発を行う中で、問題点はありますか?

若い人の中でソーシャルやエコへの関心高まりつつありますが、「アクション」まではまだ始めていないという人が多いことです。企業が取り組むSDGsはボランティア活動と違い、生活者に商品を買ってもらえないとビジネスとして続いていきません。企業が活動を続けていく上で、いかにその情報を若い人たちに届け、商品を買ってもらうかが課題となっています。

企業側の発信の仕方が重要ですね

はい。若い人たちに寄り添うことができれば、良い物を提供できる環境が整うと思います。せっかく良い取り組みをしている企業さんも多いので、「エコ」という言葉だけ訴求するのではなく、若者の興味や思考にもっと寄り添ってもらい、ライフスタイルや日常の中での取り入れ方などの視点で、若い人がワクワクするようなプロモーションをして欲しいと思います。

また、SDGsやエコ活動に対してまだ消極的な企業は、なるべく早く取り組みを始めていくべきです。今後は企業やブランドもソーシャルな取り組みへの貢献度が問われ、消費者が商品を選ぶ一つの大きな指標になってくると思います。

例えば貧困国の子供たちを働かせて安く商品を作らせるビジネスは、今後不買運動などが出てくる可能性も十分にあると思います。そのためキャンパスラボでは、若い人たちがソーシャルに目を向けていることを社会に伝え、企業側の意識を変えていくこともミッションの一つだと思っています。

夢はありますか?

若者・女性のパワーで社会を創造していくプラットフォームを広げることです。

今の若い人は未来に不安を感じていると話しましたが、その不安をなくすためには、これからの社会について本気で考え、未来の社会をデザインしていくことが必要です。キャンパスラボのプロジェクトに参加している学生は、皆さんとても感性が豊かでパワフルだと感じます。

若い人や女性の感性・視点、そして溢れるパワーで、自分たちが生きる未来をみんなで考え創造していくために、若者が社会について知る機会や社会を経験する場をキャンパスラボが提供していきたいと思います。

企画会議の様子。
プロジェクトごとに何回もミーティングを重ねる

2019年度キャンパスラボ集合写真

海と日本プロジェクトの活動を体験取材

鹿児島県の観光ツアー開発のために桜島を視察

開発した観光ツアーをパンフレットに掲載

「#Fit3033プロジェクト」の一環でフィットネス動画を撮影

「#Fit3033プロジェクト」の一環でヨガイベントを企画・実施

ボランティアに参加する楽しさや価値を学生に向けてPR

文京区の「文京バックアッパーズ」の
PRアンバサダーとして活動

札幌大学でキャンパスラボによる
アイデア創出プログラムを実施

キャリアイベントでスピーチする中山さん

女性のキャリアを考えるイベントを主催

ラグビーワールドカップ機運醸成イベントを企画・実施

東京2020に向けたボランティア企画コンテストで
最優秀賞を受賞

中山さんが福岡SDGsフォーラムにパネリストとして登壇

逗子市のビーチクリーン活動にも取り組む

我々に出来ることは?(あなたの力が必要な理由)

若い方々に伝えたいことは、「社会に関心を持ち、少しでも行動してみてほしい」ということです。SDGsやサスティナブル、ソーシャルグッドというと難しいことのように捉える方が多いかもしれません。

しかし、皆さんのちょっとした選択や買い物などの行動が、社会を変えるパワーになるということを意識してみてほしいです。SDGsのアジェンダの中に「つくる責任、つかう責任」がありますが、「つかう責任」として、若い人たちが「何を買うか?」「どのように使うか?」によって地球の未来が変わります。エコに優しい商品を選んでみたり、クラウドファンディングで環境保全に繋がる事業を支援してみるのもいいかもしれません。

いつもよりちょっとだけ「なぜだろう?」と考えてみることからはじめ、少しずつサスティナブルな行動を選択していくような動きが広まればいいなと思っています。

中山さんの想い

2013年度に開催された私のミスコンの挑戦は準優勝で終わりました。当時は優等生的な考え方で優勝しなければ駄目だと思っていたので、とても悔しかったです。しかし、ミスコンは何をやればグランプリを取れるかなどの正解がないコンテストです。優勝はできませんでしたが、大学のPRパーソンとして社会と関わる経験を通じ、「自分らしく生きるってなんだろう」と考えるきっかけになったのもミスコンだったので、「準グランプリ」でも今は良かったと思っています。

そして何より、レールのない中で学生のうちに社会を体験することの大切さに気づけたことが、今の仕事にも結びついています。

チャレンジする題材は何でもいいと思います。失敗してもいいと思います。学生の皆さんには学生期間という貴重な時間を使って、ぜひ積極的に社会と関わるチャレンジをしていただき、「どう生きたいか」を考えるきっかけにしてみていただけたらと思います。

取材・写真:上重 泰秀(じょうじゅう やすひで)http://jojucamera.com