今、あなたの力が必要な理由

vol.54

世界180カ国!2200万人が参加する壮大な清掃活動~WORLD CLEANUP DAYがつなぐ環境の輪~

浅井孝夫

浅井孝夫さん- Takao Asai -

World Cleanup Day日本事務局長 / Let's Do It! World 日本代表

1975年富山県生まれ。高校まで自然豊かな富山の環境で過ごす中で、四大公害の一つであるイタイイタイ病を知り、環境問題に関心を持つ。大学進学を機に東京へ。

国際交流活動を通して外国人との接点が増える中、むしろ日本の社会について考えるようになり、2001年弁護士となる。法律事務所や企業内で勤務する一方、韓国・米国・中国へも長期留学した。

浅井さんは何をされていますか?

私は北欧のエストニア共和国(以下エストニア)で生まれた環境NGO「Let’s Do It World」の日本代表です(参考:Let's Do Itアニュアルレポート2019)。年に1度開催される世界規模のイベント「WORLD CLEANUP DAY」(以下WCD)を円滑に進めるため主催国であるエストニアと連携し、日本サイドで活動している日本・エストニア友好協会や各環境団体との調整役をしています。

エストニアの「Let’s Do It World」は少人数で始めた清掃活動が国を巻き込む大きな市民運動に発展しました。私は声を大にして世の中を変えていこうとする情熱に感銘を受けたことがキッカケとなり、2018年の1月から関わることになりました。

「WORLD CLEANUP DAY」はどのようなイベントでしょうか?

「WORLD CLEANUP DAY」はエストニアの「Let’s Do It World」が主催しています。2008年にエストニアでたった9名の若者達の呼びかけに約5万人が参加したゴミ拾いがキッカケとなり、クリーンアップイベントは徐々に世界中に広がり、歴史上最も急速に成長している草の根運動の1つとなりました。

2019年には180カ国、2120万人が参加をして道路、公園、ビーチ、森林、河川を清掃し、全世界的な不法投棄ゴミ問題に立ち向かい、世界中で集められたゴミの総重量は推計で10万トン以上とされています。

5万人がいきなり集まったのですね

そうです。2018年5月3日を開催日と決定してから人海戦術でメッセージの輪を広げていったらクリーンアップの当日に5万人も参加してくれたそうです。

これは私の分析ですが、エストニアの人々も至る所にゴミが溢れていることに気付いていたはずです。しかし、多くの人がゴミの処理の仕方も分からず、清掃は国の仕事だと考えていただろう中、9人の若者たちの熱意ある働きかけによって意識に変化が現れたのだと思います。

このクリーンアップにはエストニアの人口130万人中、約3.8%が参加してくれたことになります。当時、ソビエトから独立してまだ十数年、国の人口比をみてもまだ若い国でもありますし、小さい国であるからこそ国民がまとまりやすい環境だったのかもしれません。

エストニアとはどのような国ですか?

バルト海東岸の南北に並ぶバルト三国の中でもっとも北に位置する国です。面積は九州本島の1.23倍と言われ、1991年にソ連から独立回復を宣言しました。国の政策としてITを行政に活用する「電子政府」を取り入れた国であり、日本のマイナンバーカードの元になった仕組みを作ったのはエストニアと言われています。

またペットボトル、瓶などを回収し消費者に還元する仕組みは日本にもありますが、この国は、約10%の高い還元率と、「寄付」というボタンを押すだけで子供達に寄付ができるように工夫され、環境だけはなく福祉に対する意識も年々高くなっている国だと思います。

2020年1月にWCDの世界会議がありました

世界のWCDのリーダー達が集結する「Let’s Do It World CONFERENCE」が2020年1月23日(木)~1月26日(日)までエストニアで開催され、私は今年で3回目の参加でした。この世界会議は毎年1月に開催され、毎年9月に行われるWCDの総括をする場だけではなく、各国の環境問題への取り組みや情報を共有する大切な会議です。

具体的にはいかがでした?

いくつかのジャンル別に分かれた会場では、テクノロジー技術を駆使してゴミの回収のアイデアを発表しているブースや、海洋ゴミ回収の研究発表をするなど、課題を解決するために意見を交換し、お互いに協力する、まさに世界的な環境会議です。

それを象徴するかのように、エストニアの大統領やEU、国連機関の代表の他に、環境問題に取り組んでいる企業の代表の方も参加されるなど、単純にWCDのイベントではなく、深刻な環境状況について考える場所だと改めて思いました。

参加されて何を感じましたか?

国の事情により取り組む内容が違います。例えば日本やシンガポール、北欧の国々は、基本的に街は比較的きれいに保たれているので、そのような環境の中で生活していると、いざクリーンアップをしようと言っても、思うように人は集まりません。

一方で、ゴミの回収や処理の制度が整っていない途上国は日常的に街にゴミが散乱している現状なので、クリーンアップの声がけに市民の反応はすごく良いです。しかし回収したゴミを処理するノウハウが途上国にはまだない状況なので、これからは国を巻き込み話を進めていかないと根本的な解決はないと思っています。

参加するたびに思うのですが、本当に世界の現状が見える会議だと思います。また2020年に行われた会議はCO2の問題など新しいテーマとして発表されていました。

2021年の会議はどのようになりますか?

私の予想ではコロナという大きな疫病の影響で、人々が集まってクリーンアップをできない状況を想定して、個人の活動で回収されたゴミの処理問題など話し合いの他に、今まではなかったマスクなどが無作為に放置されるなど、違うタイプのゴミ問題が課題に上がると思います。

各国の取り組みは違うのでしょうか?

会議には環境問題に熱心で意識の高い人だけではなく、ゴミ回収の制度が整っていない発展途上国の方々も多く参加され、現状を伝えていました。

実は一昨年も去年もWCDの参加人数が一番多かった国はインドネシアで、去年は国民の3%にあたる900万人も参加してくれました。国の人口が多い分、ゴミの量も多いので、大勢の人たちがゴミ問題について関心を持っているのだと思います。

日本の参加者は約5000人と、少ないように見えますが台風シーズンと重なりイベントに参加できない地域もあったようなので、決して日本国民がゴミ拾いに関心がないわけではないと思います。

各国取り組みで関心したことはありますか?

そうですね。東欧の国は官民一体となりメディアも協力して大きなキャンペーンを展開し、ゴミ問題を上手く紹介してくれていましたね。またキリギスタンでは馬に乗ってゴミを回収していました。

すごくのどかな光景ですが、草原の中に人知れずゴミを放置していくケースがあるのかもしれません。あとインドネシア・バリ島のある湾では、海中一面がゴミという状況のお話が印象的でした。

あのゴミだらけの海はどうにかならないでしょうか?

WCDでも海岸部の掃除はしていますが、継続的に溜まっているゴミを回収しているだけなので、根本的な解決になりません。浜辺にあるものは拾えますが、海中だと回収できる量も限られてきます。

ごみの出先が地元の方なのか観光客なのかわかりませんが、国のルールをしっかりと意識していただけるような啓蒙活動を継続していかなければなりません。今も多くの環境活動家の皆様が海洋ゴミ問題に取り組まれていますが、なかなか解決しない大きな問題だと思います。

参加国は回収されたゴミの処理を計算して活動をされていると思います。回収・処理につきまして、各国の事情を教えてください

【World Cleanup Dayで回収したごみについて】

現時点では、多くは各国の行政のごみ処理の仕組みに依存しています。そのため、リサイクルの仕組みが確立しているヨーロッパの一部の国々では、回収したペットボトルや資源ごみはリサイクルに回せていますが、アジアアフリカ諸国では、民間のNGOや業者がリサイクルを進めてくれているものの、焼却・埋め立ての割合が高いのが実情です。このあたりは、行政への働き掛けも重要だろうと思っています。

世界では日本のゴミ問題はどのように思われていますか?

日本はヨーロッパ各国と比較をすると、環境への取り組み方は非常に後進国という評価をいただいています。特にプラスチックゴミ、ペットボトルやレジ袋、過剰包装などが問題視されています。

ヨーロッパの環境問題の意識が高い方から見ると、レジ袋や包装ラップが多用されている現状に対し、使用量を減らす対策の遅れや、エコバックや紙バックの普及率の低さが話題になっています。

しかし日本の事情を理解していただけたらまた違った意見も出てくるのかもしれませんが、レジ袋を多量に使用しているニュース映像などが印象的なのでしょう。(日本は7月からビニール袋は有料化)

また食物廃棄の問題も大きいです。フードロスは中国が圧倒的に多いのですが、消費期限が過ぎるとすぐに廃棄をする日本も高い割合となっています。フードロスは統計的にはアジアの地域で高い数値が出ているので、世界の人々からは指摘を受けています。

さらに日本はプラスチックのリサイクルといっても、焼却してエネルギー回収することも含みます。ここが根本的に環境先進国と言われる国々と大きく違います。

たしかに日本のペットボトルの回収率は91%と高く、リサイクル率も84%と高くなってはいますが、このうち半分は燃焼されており、このようなサーマルリサイクル(熱回収)をリサイクルと捉えないEUの考え方からすると、日本はリサイクルが進んでいる国とはいえないということになります。

そのことも後進国と指摘される一因かもしれませんね。

これからWCDはどのように発展していきますか?

1年に1日だけのWCDは、環境について考える日です。これからもっと認知され多くの方々に参加していただけることを願っています。日本ではまだまだこれからのイベントですが、WCDのムーブメントが世界中に広がれば、環境問題により目を向けてもらえるチャンスだと思っています。

問題点はありますか?

今は、加盟国の参加人数に偏りがあります。国としては180カ国が協力し2000万人以上が参加していますが、そのうち約45%がインドネシアからの参加なのでまだ他国が大勢参加してくれる余地はあると思います。一部だけのムーブメントに終わるのではなく、これからも広げていくことが大きな課題だと思っています。

また日本人は環境問題において先進国だと思われているかもしれません。確かにゴミ回収の仕組みなど整っている部分もあります。しかしゴミ問題は国に任せるだけではなく、個人個人が考えることで問題が解決する方向に向かうと思いますので、小さなことからでも自ら取り組んでいただきたいと思います。

2020年WCDはいかがでしたでしょうか?

今年2020年9月19日も158か国以上でクリーンアップが行われました。コロナ禍の影響もあり、去年までの進め方とは異なり、チャレンジも多くありました。感染予防対策をしながら海辺や街中を清掃した国々もあれば、人々が集まれず個人単位で実施した国々もありました。そのような中でも、多くの方々に参加していただき、SNSを通じて発信していただけたことに感謝しております。

2020年1月WCD世界会議にてグループ報告

2020年1月WCD世界会議にて各地域代表紹介

2020年1月WCD世界会議にてアジアからの参加者

WCD2020 (アラブ首長国連邦)

WCD2020 (カンボジア)

WCD2020 (アゼルバイジャン)

WCD2020 (キルギスタン)

WCD2020 (スリランカ)

WCD2020 (マレーシア)

WCD2020 (アゼルバイジャン)

WCD2020 (オマーン)

WCD2020 (マレーシア)

WCD2020 (タンザニア)

江ノ島では400人を超える参加者が集まった

渋谷で行われたWCD活動

我々に出来ることは?(あなたの力が必要な理由)

環境問題は一人だけで解決することはありません。しかし「小さな力」「少しだけの努力」でも、数が集まれば大きな成果が生み出せる可能性があります。

また、今の活動は、すぐには結果が見えません。しかし10年、20年、30年先は改善された結果として見えてきます。ですので、次の世代のために環境問題を考えていただきたいです。

浅井さんの想い

環境問題や社会問題など一人では解決できないと思う課題でも、同じ想いを持つ人と力を合わせることで、少しずつでも改善していくと思います。私自身も地道に環境活動に取り組んで行きたいと思っています。

江ノ島でゴミ拾いをする浅井さん

取材・写真:上重 泰秀(じょうじゅう やすひで)http://jojucamera.com