神奈川県藤沢市の観光親善大使のお仕事を教えてください
僕が神奈川県藤沢市の観光親善大使に任命されて、10年が経ちました。大使の仕事は、藤沢市が主催するイベントなどに参加して、藤沢の魅力をアピールすることです。
中でも「湘南海岸海開き」や「湘南マラソン」は大きなイベントで、多くの方に湘南の良さを伝えるチャンスだと思っています。しかし、僕個人は「観光親善大使」だからといって特別なことをしているわけではありません。以前からSNSで藤沢の魅力を発信していましたし、これからも伝え続けていきます。
この10年間で変化はありましたか?
藤沢市辻堂駅前に広がる商業施設「テラスモール湘南」が開場した時期に、大使として関わらせていただいたので、辻堂の街が大きく発展していく様を見てきました。
僕は藤沢市に引っ越してきて、今年(2022年)で14年目になりますが、藤沢全体でファミリー層の人口が増えてきた印象です。
つるのさんにとって藤沢とはどのような街でしょうか?
東京は仕事する場所です。そして、藤沢は僕にとって、完全にスイッチのオンとオフを切り替えることができるプライベートな場所だと思っています。
藤沢は都心から遠いと思われがちですが、東京から1〜2時間の距離。僕はその移動時間を使って新聞や本を読んだり、有効活用しています。そして家に着くと、潮風を感じながら、ネクタイを緩めリラックスしていく感じですね(笑)。
サーフィンや農園をやられていると聞きました
実は最近まで、保育士の資格を目指すために短大に通っていたので、時間がなくサーフィンは控えていましたが、2022年3月に無事卒業しました。これからは、時間を見つけて波乗りを再開します。
また、藤沢市北部に「つるの農園」と名付けた畑を持っています。昔は僕自身が野菜作りをしていたのですが、最近では義弟が野菜作りにハマってしまって、毎日のように畑に通っています。この時期だとニンジンや菊芋を作っていますね。
藤沢のサーフィン事情は、どんな雰囲気ですか?
藤沢のサーファーは自然を大切にする文化が根付いているので、波に乗る前後にしっかりビーチクリーン活動をしています。しかし、最近では「ゴミが拾えない」というくらい、湘南の砂浜の見た目はきれいになっています(笑)。
では、つるのさんの「環境活動」について教えてください
僕は大好きな自然の恩恵に、いつも感謝を忘れずに生活しています。海に遊びに行く時は必ず、海への恩返しの意味を込め、ゴミを持ち帰ることを心掛けています。
しかし「自然に興味を持とう!」と構えているわけではありません。ただ自然の中で遊ばせていただいているので、この美味しい魚を守るためどうすれば良いのか?海がきれいになるにはどうしたらいいのか?そのような意識を常に持ち行動しているだけです。
湘南のゴミはどこからくるのでしょうか?
湘南の海岸に流れつくゴミの約80%は、街のゴミが川から流れてくると言われています。特に湘南は、境川・引地川・相模川と川が多いため、流域全体から流れ出るゴミの量はとても多いのです。そのようなことから、海沿いに住んでいる我々がゴミへの意識を持っていても、それだけでは解決しません。
つまり、海のない街に住んでいる方への伝え方が課題なのです。しかし、実際にはいくら口で伝えても、肌感として伝わらないのが現状です。恥ずかしいお話なのですが、都内に住んでいた時は、ゴミが川から海に流れ出ることを意識していませんでした。今は当時の自戒の念を込め、環境活動に携わっています。
どのようにすれば川ゴミのことが伝わると思いますか?
海の環境問題に興味がない方に、イベントなどを通して体験していただき、根気よく啓蒙していくしかないでしょう。砂浜は見た目にはきれいですが、悪天候が続くと大量のゴミが浜に打ち上がります。そのような悪い状況の時こそ、ゴミ拾いを開催することができれば、大変な現状を理解してくれるのかもしれませんね。
伝え方が難しいですね
はい、そうです。ただ僕は「環境だ!」と、声高に主張する必要はないと思っています。環境問題は深刻な話が多く、硬くなりすぎます。それにお説教臭くなるのがすごく嫌なので、伝え方は工夫しなければなりません。どれだけポップに表現できるかが、ポイントかもしれませんね。
しかし、世の中には環境問題以外にも大変な課題がたくさんあります。地震の影響による電力不足もそうですし、戦争も始まってしまった。環境ばかりに偏ると、バランスが悪くなると思っています。だからこそ、僕は相対的に広い視野で見なければならないと思っています。
つるのさんの言う相対的な視野とは?
環境のことをより深く考えるために、次のステージとして「現実」を理解することだと思っています。環境問題と言えば耳障りもいいし、最近ではSDGsなどの言葉もよく耳にします。
その「言葉」を窓口にして環境問題に関わることは大切ですが、「言葉」のイメージだけで流されてしまうのではなく、本質的なこともしっかり見なければなりません。
言葉だけでカテゴライズされると、問題が偏り、嫌な傾向になることが経験上わかるので、もう少し広い意味で環境問題を意識していきたいと思っています。難しいことですけれど。
環境活動を無理なく続けるにはどのようにすれば良いでしょうか?
やはり「誰かがやればいいじゃん」ではなく、ひとり一人がしっかり考えることが大切。まずは海の現状を「知る」、それに加え「ゴミを捨てない」や「海にゴミが流れる」などの意識を育つことが大事だと思います。
また、ゴミ拾いなど人が一堂に集まるイベントでは、環境に向けて心が一つになることもあるので、それも無理なくできる方法の一つかもしれませんね。
これから湘南の海はどのようになっていけば良いとお考えですか?
きれいに越したことはないですよ。地球の7割が海なんですから。それに、このまま海洋汚染が進むと、魚が食べられなくなるかもしれない。海がきれいじゃないと、我々は生きていけないと思いませんか?
だけど、今の世の中の課題は環境問題だけじゃありません。政治や経済など、色々な問題が網の目のように複雑に絡んでいます。環境や平和について考えることも大切ですが、人間が地球上で生きていくために、自然と共生していくために、現実をしっかり見据えていきたいですね。
日本の海の環境については、どのように思っていますか?
最近は、よく釣りをしているのですが、本当に魚が減ったと実感しています。また、マグロで有名な青森県大間でも漁獲量が減り、漁師さんが困っているという話も聞いています。
逆に瀬戸内海では海水がきれいになりすぎて、生き物の栄養(リンや窒素など)が不足してきたため、管理しながら流せるようにしたと聞きました。しかし、僕は環境の専門家ではないので、環境がどのように影響しているのかわかりません。
ただ、サーフィンや釣りを通じて海の環境について考えているので、このような海の現状について知らない方々に「このきれいな海は当たり前のことではないんだよ」と伝えたいです。
日本財団主催「海と日本プロジェクト」の活動の一環として行われた「海の叫び魚」のデザイン画を描かれました
「海ゴミの現状を透明な魚型のオブジェを作り視覚的に伝える」という企画だったので、デザイン画を引き受けることにしました。完成したお魚のオブジェは全国巡回展を開催(2018年4月9日〜2022年1月6日)し、視覚で訴えながら海ゴミのことを大勢の方に伝えたと聞いています。
ロケ先で、たまに「海の叫び魚」を見つけると「お〜こんなところにいたのかぁ〜」と嬉しく思いました。たまにあるんですよ。僕が出演していたウルトラマンの置物もあちこちに置いてあったりするので(笑)。
環境のお仕事もされていますか?
最近では、京都⼤学と⽇本財団が共同で実施しているRE:CONNECT事業の⼀環として、シチズンサイエンスの⼿法で海洋ゴミの今を知る「PicSea(ピクシー)」がリリースされまして、その紹介をしてくれた西日本放送の番組でナレーションを担当させていただきました。
「PicSea(ピクシー)」って何ですか?
スマートフォンで撮影したゴミを、アプリ「PicSea」を通じて投稿する事で、誰でも気軽に海洋ゴミの研究に参加できるというシステムです。
具体的には、海ごみを撮影するとその写真が京大に転送され、どこでどんなゴミが拾われたかという調査・研究に使用されます。今後このシステムが発展すると、日本全国のゴミの流れ等をデータとして管理できるそうです。
PicSeaについて:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000076210.html