今、あなたの力が必要な理由

vol.75

東日本大震災から11年、仙台市荒浜地区の現在地点~不法投棄との闘いは継続中~

庄子隆弘

庄子隆弘さん- Takahiro Shouji -

フカヌマビーチクリーン事務局

宮城生まれ。東日本大震災による津波で仙台市荒浜の自宅が全壊。その後、災害危険区域となり住めなくなったが、2014年より自宅跡地を拠点に荒浜地域全体を“図書館”に見立てた「海辺の図書館」の取り組みを始める。砂浜をギャラリーにした「海辺の写真展」や、海岸清掃「深沼ビーチクリーン」などを通し、人が住めない地域でのまちづくりを模索中。

2016年に「第5回東北みらい賞」を受賞。その他、みちのく図書館員連合幹事、図書館総合展運営協力員、ビブリオバトル普及委員等、本や図書館に関わる取り組みを行っている。

▼海辺の図書館ホームページ
https://note.com/seaside_library

▼フカヌマビーチクリーン BLUE SHIPページ
https://blueshipjapan.com/crew/fukanumabeach

震災から11年が経ちました。その間どのような活動をされてきましたか?

私たちの活動する仙台市若林区荒浜地域は、東日本大震災による津波被害により災害危険区域に指定され、約800世帯2200人の方々が住むことができなくなりました。しかし、私を含めこの地区に住み続けたいという願いを込めて「荒浜再生を願う会」が2011年11月に設立され、地域清掃活動・海岸清掃も行っていました。私は2014年から活動に参加しています。

発足当時は60人ほどで活動をスタートし、多い時には100人くらい集まりました。時が経つにつれ、参加人数も減りましたが、当初の目的である「荒浜に多くの人が集う」という一定の成果が得られたので、発展的な解散として「荒浜再生を願う会」は2018年6月に終了しました。

そして新たにフカヌマビーチクリーンを立ち上げたのですね

はい。これまで参加してくださった方々から「海岸清掃を続けて欲しい」という声が多く聞かれたので「荒浜再生を願う会」で事務局をしていた私と、深沼海水浴場の再開に向けたイベントで地域に関わっていた株式会社ユーメディアの並木直子、詩人の武田こうじを中心に、「フカヌマビーチクリーン」を任意団体として2019年3月に設立しました。

代表や予算は持たず、ゆるい繋がりで運営し、環境問題といった社会課題へのアプローチというよりは、「荒浜」という地域に焦点を絞った取り組みをしています。

活動されている「荒浜」や「深沼海水浴場」のことを教えてください

荒浜は日本で一番長い運河とも呼ばれている貞山運河を抱える、風光明媚な街です。そして、深沼海水浴場は仙台市にある唯一の海水浴場です。

震災後は遊泳禁止になってしまいましたが、それでも、2016年に離岸流調査などの安全面の確認作業が実施され、2017年から毎年「深沼海水浴場親水イベント」がスタート。日数や入場者数を限定して試験的に海開きされていました。残念なことに折からのコロナ禍で、2020年、2021年は開催中止でした。

そんなビーチですが、毎週末には多くの人が訪れています。水遊びをする家族をはじめ、サーフィンや釣りなどを楽しまれてますね。最近ではビーチテニスやビーチサッカー、地元学生の運動部員たちの練習風景なども見受けられるようになりました。

どちらで活動していますか?

私たちがゴミ拾い活動の拠点としている場所は、海岸公園センターハウス(指定管理者(公財)仙台市公園緑地協会)です。荒浜の海岸から徒歩5分の立地の施設にも、津波が屋根まで押し寄せ、大きな被害を受けました。数年前に修理が完了し、現在はこの施設の正面玄関で、受付業務やゴミ収集場所等などお願いしています。

庄子さんの仕事内容を教えてください

毎月第2日曜日に開催しているフカヌマビーチクリーンの広報、行政の担当部局との調整、各種問い合わせ対応、当日の運営や関連団体とのコミュニケーション(海岸清掃・地域・震災等)などです。そして、津波の被災者でもある私個人で「海辺の図書館」という施設を作り、震災を風化させないために荒浜地区のアーカイブ情報を提供しています。

「海辺の図書館」ではどのような情報を発信しているのでしょうか?

震災後、仮説住宅で生活しながら、日々の仕事や自宅の片付けをしていました。ある時、自宅の跡地で地元の人と話をする機会があり、「昔の荒浜はこんなところだったんだよね」と、自分の知らない荒浜をいろいろ教えてくれました。荒浜の歴史や風土を知ることができ、心が豊かになる感じがしました。

そこで私は街全体を図書館に見立て、訪れた人に、地域の自然や人、荒浜の暮らしや文化に触れてもらうことを思いつき、2014年、自宅跡地に「海辺の図書館」を立ち上げました。震災前の生活や文化を元住民から聴いたり、波の音が聴こえるベンチで読書や楽器の演奏をしたり、石窯ピザ作りやBBQを楽しんだりと、いろいろなことが “本を読むように体験できる図書館” として運営しています。

多量の漂着ゴミと不法投棄があるとお聞きしています。どのような状況ですか?

漂着ゴミでは、漁具の網や浮き・ブイなどが多いです。中でも「豆管」(マメカン)という帆立や、牡蠣の養殖に使う塩化プラスチックの短いパイプ状の漁具が、大量に砂浜に打ち上がります。

魚網などが砂浜に埋まっている時には、子ども達が活躍してくれます。彼らは埋没ゴミを見つける名人です。大人より早く見つけ出し、仲間と楽しみながら掘り出してくれるので、大変助かっています。なぜか、市場などで使われるパレットもよく見かけますが、どこから流れ着いたのかもわかりません。漂着ゴミは年々増えており、憤りを感じています。

不法投棄の状況はいかがですか?

不法投棄が多いのは、引っ越しシーズンの2〜4月頃で、カラーボックス・机・椅子・絨毯・ソファーなどの家具類、テレビ・冷蔵庫・電子レンジといった家電など、一通り集めれば住めてしまうほど捨ててあります。これらは、いずれも廃棄の際に費用がかかるのが特徴です。最近の家具製品は安価であるため、それが要因のひとつであることを示唆しています。

7〜9月頃の夏季には、レジャー用品の廃棄が多くなります。ブルーシートに食材や食器などがくるまれて放置されていたり、子ども用の遊具、テントなどのアウトドア用品ですね。最近多いのはBBQコンロで、炭や網などがそのままの状態で放置されていることもあります。

一度使っただけのようなものが多く、こちらも安価で提供されている弊害だと感じています。また、一年を通して必ず落ちているのがタイヤです。

深刻な状況ですね

震災被害で地域の住民が少なくなってしまったことも、不法投棄が増えている理由の一つだと考えています。

しかし、これらの不法投棄の多くは、捨てている本人たちにも罪の意識があるらしく、投棄する時間を選んでいるのかもしれません。特に夜間のBBQでは、砂だらけになった器具を車に入れて持ち帰るのが嫌になり、こっそりと見えないような海岸林の中や草むらに捨てていくのです。

そして、帰ってしまえば、不法投棄をした事実を思い出すことはなく、日常生活に戻っていきます。その方たちは「残されたゴミがどうなっているか?」なんて微塵も想像できないのでしょう。

大量に浜に打ち上がる豆管とはどのようなものでしょうか?

豆管は養殖で使う漁具の一種で、個体同士の衝突を防ぐ緩衝材であることを聞きました。昔は竹で作っていたそうですが、時代の流れと利便性から塩化ビニール製に変更したそうです。悪天候で緩衝材となっている豆管が養殖棚のワイヤーから外れてしまうと、東北沿岸の砂浜に大量に漂着してしまうことがわかりました。

しかし、この豆管はリサイクルできるので、「荒浜再生を願う会」の活動で拾い集めた大量の豆管は、波伝谷地区の漁師さんへ届けています。

被害が大きい場合はどのような対応を?

フカヌマビーチクリーンでは、配布しているゴミ袋に入らないゴミは回収しないよう呼びかけています。大きなゴミは通常のビーチクリーンでは回収対象とならず、放置せざるを得ない状況です。そのような場合は写真を撮影し、不法投棄の現状を行政の方や議員などにすぐ連絡して、対処のお願いをしています。

また、年に1〜2回は、まとめて仙台市で処分してもらっています。十分とは言えませんが、産業廃棄物の処理には費用がかかるため、致し方ないところです。

小さな団体にできることは限られていますが、行政や他の地域のビーチクリーン団体とも情報を共有しながら、今後も課題解決に向け継続できればと考えています。

海ゴミ問題を解決するためにできることは?

台風シーズンなど、低気圧の影響で海が荒れると、漂着ゴミはひどい状況になります。そのため、漁具に関するゴミの現状は、漁業関係者とも共有して対話を進めています。

荒浜一ヶ所だけの問題でなく、沿岸部全てに関わることなので、小さな環境団体では対応が難しいと思っていました。しかし、その矢先の2021年に、「みやぎ海岸美化協議会」が立ち上がりました。彼らの存在は、私たちが抱える社会課題やゴミ問題の一助となるかもしれません。

「みやぎ海岸美化協議会」はどのような団体ですか?

「みやぎ海岸美化協議会」は、「海」と「人」が、再び優しく関わり合う関係を取り戻したいとの思いから、自治体や民間企業、地元報道機関が一体となり、環境課題を解決するために「点」から「線」、そして「面として」東北沿岸全体の美化を考え、その問題を解決するために活動している団体です。

宮城県の各沿岸部には、同じ想いで活動している市民団体がいくつも存在しているので、各環境団体と情報を共有し、なにより多くの方に、自分事として考えてもらえるような取り組みをしています。

不法投棄や海ゴミ問題はどのように捉えていますか?

このような深刻な状況が続くと、海辺のレジャーを楽しんでいる人たちを見ていても「ゴミを持ち帰れよ」といった目で見てしまいますし、心もギスギスしてきます。

震災から月日が経ち、少しずつ海辺の賑わいが戻ってくることは、とても嬉しいことです。しかし、一部の人のこうした行為によって、無粋な看板が立ったり、立ち入り禁止のロープが張られたりと、地域の魅力を減少させるような対策を取らざるを得ない状況になってしまい、とても残念な気持ちです。

将来的にどのような海になって欲しいでしょうか?

子ども達が裸足で駆け回れる砂浜、キレイな浜にだけ生息するスナガニや海浜植物など自然豊かな海辺。訪れる人々がお互いを尊重し合えるような優しい場所。「東日本大震災」で荒浜を離れた人たちが戻ってきた時に、喜んでもらえるような海にしたいです。

今後の活動について教えてください

現在は毎月第2日曜日 午前10時30分〜11時30分まで清掃活動を行っています。参加していただいた方、一人一人に丁寧に接していくことを心がけて活動しています。中でも百万都市の仙台市の方は、海水浴に来る機会が少ない方もいるので、そのような方々にも興味を持っていただけるような活動を継続し、「荒浜」という地域をもっと知ってもらいたいです。

しかし、小さな団体がゆえ、参加してくださる人数が多くなると、対応が難しくなる可能性もあります。参加者の人数とスタッフのバランスをうまくとることが、これからの課題かもしれません。

夏場に多くなる花火の燃え殻

「海辺の図書館」地域の資料が集められている

「海辺の図書館」外観

活動をしている海岸公園センターハウス、震災時は屋根まで津波が押し寄せた

大きな発泡スチロールも砕ける前に拾うことが大切

大きな不法投棄があると写真を撮って、市へ報告

たった1時間のゴミ拾いで、たくさんのゴミが集まる

並木さん庄子さん、武田さん

タイヤは、わざわざ持ち込んで捨てていく人が多い

「豆管(まめかん)」は、牡蠣の養殖に使われる漁具

受付の様子

丁寧な説明を心がけ、参加者に対応中の庄子さん

個体同士の衝突を防ぐ緩衝材の豆管

広い海岸でゴミ拾いを行う参加者

ゴミ拾い中の庄子さん

漁具の浮き玉も多く砂浜に打ち上げられています。
ゴミがゴミを呼ばないよう産廃も一時的に保管しています

我々に出来ることは?(あなたの力が必要な理由)

東日本大震災の津波の被害があった地域では、親子連れの方々が減っていたのですが、少しづつ関心が戻ってきたと感じています。その一方で、住民が減った地域では、ゴミの不法投棄やBBQの残骸をそのままにして帰るなど、マナー違反も多くなっているのが現状です。

しかし、皆様のお力によって、美しい浜を取り戻す可能性もあると思いますので、機会がありましたら、荒浜の清掃活動にぜひご参加ください。

庄子さんの想い

ひとり、ふたりがゴミを拾っても、ゴミを大幅に減らすことはできません。海は世界と繋がっており「自分が」「地域が」「日本が」と一生懸命頑張るだけでは、ゴミの流出は止まりません。

だからこそ、世界中の方々が「ゴミを捨てない」という共有意識を持つことが、とても大事になってくると思っています。

取材・写真:上重 泰秀(じょうじゅう やすひで)http://jojucamera.com