早稲田ロータリーの会はどのような団体でしょうか?
2020年に新設された早稲田大学公認のボランティアサークルです。東京の高田馬場駅早稲田口にあるロータリー広場の清掃活動しています。
このスペースは地域の憩いの場として多くの方々に利用される一方で、不法投棄・散乱ゴミなどが「日常化」されてきました。その問題を解決をするために、この会は発足されました。
立ち上げのきっかけを教えてください
高田馬場という土地柄、駅近のこのスペースは早稲田生や他の大学の方々が多く利用しているため、散乱している多くのゴミは、学生たちが処理を怠っている結果だと推測しています。そのため、ロータリーのゴミは、学生である自分たちの手で解決したいと思っています。
私たちが活動する以前のロータリーの清掃は、新宿区の清掃員が片付けていました。しかし、「学生たちが汚したロータリーを清掃員が片付けるのも変な話だ」と思い、初代代表が奮い立ったことがきっかけです。
末永さんはなぜロータリーの会に参加したのでしょうか?
ロータリーの会のTwitterで、散乱したゴミの写真を見て驚きました。実際にロータリーに足を運んで現実を目の当たりにし、その現状を変えたいと思い参加しました。
どのような会員さんがいらっしゃいますか?
基本的に早稲田生や大学院生の生徒を中心に活動しています。他の大学からの参加も認めていて、現在の会員数は48人です。
少しずつではありますが、会員も増えてきています。これからも活動を継続して、後輩たちにしっかりと託していきます。
具体的な活動内容を教えてください
私たちの活動は、毎週月〜木曜日の朝8時から8時30分までと、金曜日の23時から23時30分までです。土日と雨の日の活動はお休みをいただいています。
また、ロータリーの表面的な汚れがひどいので、2021年3月から毎月1回、高圧洗浄機を使ってタイルを洗う「ロータリー磨き」も始めました。使用している掃除機材は企業・新宿区・私たちとの連係で、お借りすることができました。
しっかりと活動されていますね
1回のゴミ拾いでは、5〜15人と小規模の活動ですが、今までに数百回以上ゴミ拾いを続けています。毎朝、回収する大量のゴミは新宿区指定の場所に置かせていただきます。その際に使用するゴミ袋など、企業からの提供や個人からの寄付など、支援の輪も広がっています。
活動を始めて変化はありましたか?
活動を開始してから3年が経ちますが、何もしていなかった頃より、だいぶきれいになったと感じています。中には私たちが拾うと思って、大きな袋に空缶をまとめて隅に置いてある時があります。このように、以前と比べてロータリー利用者の姿勢も変わってきていると感じています。
また、TwitterやインスタグラムなどのSNSを通じて朝晩の活動を公開しており、私たちの活動が多くの方の目に止まっていることも、少しずつ改善している理由の一つかもしれませんね。いずれにせよポイ捨てが減少することを願っています。
清掃活動ではどのようなゴミがありますか?
ロータリーの会では、清掃活動の際に出るゴミの数を、分類ごとに集計・記録しています。散乱ごみの種類や変化量を可視化し、今後の問題対策に反映させたいと思っています。
ロータリーに多く散乱しているゴミの内訳は、タバコの吸い殻と空き缶が多数を占めます。広場内に喫煙所が常設されているのにもかかわらず、入り口付近や植え込みを中心に、多い時には1,000本以上のタバコが捨てられています。月の平均は、缶100個、瓶10本、ペットボトルが20本、タバコが700本くらいです。そして、週明けの月曜日の朝が一番多いです。
ゴールは考えていますか?
完全にゴミ問題が解決して、私たちの必要性がなくなった時だと考えています。それには利用者のマインドが変化することが大切なので、長い道のりになりそうです。
ロータリーの会は清掃が中心の活動ですか?
私たちロータリーの会は、早稲田大学内でも「ロータリー掃除」だけをしているサークルだと思われがちですが、実際には企業と協働して町の清掃活動をしたり、環境問題の啓発活動にも参加しています。
また、ポスターやCMの制作などの幅広い活動を通し、高田馬場駅前ゴミ問題を伝えようと頑張っているところです。
清掃中に否定的な意見を投げかけられることも?
暴言は夜の清掃活動に言われることが多いです。例を挙げるとキリがありませんが、喫煙所以外でタバコを吸っていた方に注意すると中指を立てられたり、ゴミを拾っている目の前でわざと空缶を置いたり、女子会員が掃除している時に「おい女、掃除してんじゃねぇ」「ロータリーは汚していいんだ」と罵られたり、お酒をかけられたりしたこともあります。
喧嘩に巻き込まれそうになったこともありました。酔客が多いので仕方ない部分もあるのですが、はっきり言って危険です。朝はサラリーマンが僕たちの活動を見てくれているのか、SNSを通じて応援メッセージを送ってくれることもあります。その時はとても励みになります。
ポイ捨て問題はどうすれば伝わると思いますか?
清掃活動を続けながら、私たちも常々考えています。しかし、ポイ捨てをしている方々を「悪」として見ることだけはしないようにしています。
それよりは、私たちの朝晩の活動を見て、何かを感じていただければと願っています。時間はかかるかもしれませんが、それが一番伝わるのではないかと感じています。
しかし、夜11時スタートのゴミ拾いでは、酔っている方々に理性的に伝えること難しいですから、そこが一番のネックですね。
酔客に伝えることは難しいかもしれませんね
とても難しいです。例えば、以前は会員全員でお揃いのジャンパーを着て活動していたのですが、途中でやめました。その理由は、「捨てる」と「拾う」両人の対立が表面化してしまうことは本意ではないためです。
また、ロータリーは閉鎖的な空間なので、「ここで捨てていい」いう雰囲気が根付いてしまっていることも大きな問題だと感じています。
例えば、普段は街でポイ捨てをしない方々も「あの場所ならいいか」「周りが捨てているから」という気持ちになってしまう状況なので、そのマインドを変えていきたいですね。
問題点があるとすれば?
ロータリーにはゴミ箱がありません。もし公共のゴミ箱があれば状況は違っていたかもしれません。現在、区にゴミ箱設置の申請を思案中ですが、ゴミ箱はセキュリティーの観点から、設置許可までのハードルが高いので難しいと考えています。
でも、嬉しいこともありましたよ。暗かったロータリーに照明の設置を申請をしたところ、実際に灯が灯されました。ロータリーは明るく照らされましたが、ゴミの現状はあまり変わりません。
では、学生であるがゆえの苦労はありますか?
私たちは大学公認のサークルとして活動していますが、例えば協賛していただける企業の打ち合わせで、本当に大事な話になってくると話が進まないこともありました。
学生サークルは100%の信用ができないという気持ちも理解はできます。実際に継続できない団体や、学生に裏切られたいう経験などから躊躇しているのかもしれません。
私たちとしては、活動を継続することで信用を得ていくしかないと考えています。
コロナの影響で密を避けるため、ロータリーが閉鎖されましたね
はい。新型コロナ感染症拡大に伴い、外飲みなどが問題視され、感染症拡大防止の観点から2021年の5月18日〜12月1日まで封鎖されました。その模様はニュースで大きく取り上げられましたので、覚えている方も多いと思います。しかし閉鎖期間中、私たちは早稲田通り周辺で朝8時から清掃活動を継続していました。
解決するためにゴミ箱の設置や人々の意識改革以外に何がありますか?
直接解決に結びつくアイデアは、今のところ思いついていません。しかし、この数年間の活動で学んだことがあります。それは、昨年のロータリーを封鎖された際に、当然ですがロータリーのポイ捨てゴミは無くなりました。
でも、閉鎖することでゴミが無くなっても根本的な問題解決には至らず、残念ながら、封鎖解除後には多くのポイ捨てが始まってしまいました。
今後高田馬場の街はどのようになっていけば良いと考えていますか?
高田馬場は学生街なので、ロータリーのゴミ問題は学生が大きな起因になっていると考えています。しかし、学生達が街に活気を与えていることは間違いないので、学生たちの行儀の悪さが注目されるのではなく、良いニュースがクローズアップされるような街になって欲しいです。