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里海~SATOUMI~② アイキャッチ

2017.11.02(木)

里海~SATOUMI~②

里海とは?

 

その海域の保全・維持管理についてざっくりと前半にお話ししました。

 

里海とは、人間の手を加えて豊かな生態系を育んだ沿岸海域を指します。

 

今回は、里海の有用性・その具体例をお話したいと思います。

 

 

★有用性について★

 

自然を搾取し尽くし経済成長も伸び悩み、地球環境の危機に我々人類は自らを追い込んでいます。。これは20世紀型経済成長のもたらした副作用。

 

これを打開するものとして里海を見ると・・・

 

●自然と対話して、適切に手を加えて本来の生態系を整え大切に維持管理

漁師、そして人間活動に有益

 

●海水浴をする環境としても良くなる‼人が暮らすにも快適に。人間もそこで暮らす生物の一員。

実際に湘南エリアは海水浴場のメッカ。海外からもたくさんの観光客の皆さんが訪れる。汚い砂浜、澱んだ海水は恥ずかしい・・。観光地としての経済効果にも有益。

 

●貝類もナマコもタツノオトシゴも、そしてヒトも生きやすい環境。

交換し合い、高め合い、共存する関係は海洋にとどまらず、山岳地、森林、都市部にも及ぶ。

なぜならば、「生態系に境界線などない」から。

すべての生物、さらには水も空気も、全てのものが循環し相乗効果を発揮する。


 

ここで「里海」発祥の海、瀬戸内海の例をあげます。

 

戦後の高度成長期の1970年代。一年間に300回近く赤潮が発生した瀬戸内海は”汚くて臭い海”、「死の海」とまで言われていたそうです。

 

垂れ流されるコンビナートの工場排水、人口が増えた沿岸の都市から流れ込む生活雑排水。

 

「人が豊かさを追い求めると、いつも海は汚染された」


 

☆彡その海が「里海」によって甦ったのです‼

 

「海に種をまく漁師たち」

 

岡山県備前市の「日生」という港の近く。一面緑の水中の草原。

 

この草原の主役は「アマモ」。イネ科に近く種子で増える種子植物です。

一般的な海の海藻とは異なる陸生の植物由来。

 

    

この草原は、多くの魚の稚魚、そして産卵場となり「海のゆりかご」とも称されます。

また、水中に差し込む陽の光を浴び盛んに光合成を行うので、海中の酸素の供給源にも。 

 

海の汚染が酷かった頃、ゆりかごは姿を消していました。

赤潮の低酸素海域からの魚の漁獲量は激減していたそうです。。

 

「水中の草原」は自然に蘇ったわけではありません。

 

日生の漁師の30年にも及ぶ海の見守りと手入れの努力の賜物なのです。

 

消えたアマモの草原を自分たちの手で復活させようとアマモの種子を撒き始めたのがはじまり。

 

まるで農家のように。

 

しかし、瀬戸内海が’「赤潮の海」だった頃は、海水の透明度が汚染で酷く海底に光が届かなく、せっかくアマモの種が芽を出してもすぐに枯れてしまう等うまくは行かなかったようです。

 

そこで漁師達は、自分たちの「カキいかだ」を引っ張ってきました。

 

カキは「天然のろ過装置」と呼ばれるように、海中の窒素やリンなど富栄養化物質を利用し大増殖した赤潮の原因となるプランクトンをせっせと食べ始めたのです。

 

漁師はアマモもカキも活かし、瀬戸内海を蘇らせたのでした。

 

海の命のサイクルを担うすべてのものに目を凝らし、手を入れる。

すると海はお返しをしてきます。

​​​​​​この「人と海の持ちつ持たれつ」の関係。

これぞ里海です。

 

今回、例に挙げた「死の海から復活した瀬戸内海」のお話は、

角川新書から発刊された井上恭介、NHK里海取材班著「里海資本論~日本社会は「共生の原理」で動く~」

にて詳しく紹介されております。

 

『里海』に興味を持たれた方は是非、この本を手に取ってみてください★

 

ではまた!LOVE NATUREsmiley